取り急ぎ訂正のお知らせ

●『ユリイカ』2009年4月号(青土社

ユリイカ2009年4月号 特集=RPGの冒険

■先月末に発売された『ユリイカ』(特集/RPGの冒険)に、「システムと戯れること、物語を読むこと」という文章を寄稿しました。その文中で『ローグ』の発表年を「1975年」としているのですが、どうもこれが間違いのようです。id:ggincさんのご指摘(と、彼が引用しているid:hallyさんの記述)によれば、「1980年(or81年)」が正しい(ご指摘いただいたのは、以下のエントリ→http://d.hatena.ne.jp/gginc/20090330/1238400782。ほかのエントリもなかなか興味深いです)。


■というか、この文章を書いているときにも「一体どっちが正しいんだ?」と悩んで、いろいろ調べたんですが、最終的には(id:hallyさんが指摘しているように)『電視遊戯大全』の記述を採用してしまったのでした。「『ローグ』は最初のコンピュータRPG」という思い込みに引っ張られてしまった側面も大きい(『ローグ』の発表年が1980年だとすると、いくつかの先行作品が存在しています)。いやはや、まったく面目ない。議論の大筋には、大きな影響を与えないと思うのですが、ここに訂正します。あと「いわばRPGの元祖と呼ぶべき作品である」という文章も、削除ですね……。


■それはともかく(って横に置いちゃマズいんですが)、この特集号は「RPG」という奇妙な、コンピュータゲームの1ジャンルの問題について、さまざまな角度から検討がなされていて、大変興味深く読みました。安田朗さんが描かれた表紙も、実にしっとりしていて素敵です。


■えー、そのほかにも先月、いろいろとリリースされたものがあるのですが、それらについては後ほど、まとめてアップします。


※追記/肝心のid:ggincさんのエントリURLが抜けておりました。

2009年2月の営業報告

■『スパイダーマン』や『ダークナイト』『アイアンマン』など、アメコミの映画化が多いのは最近に始まったことではないですが、同じ事務所のデザイナーであるコヤマシゲトくんから勧められたこともあって、最近、ちょこちょことアメコミを買い始めました。前に熱心に集めていたのは『オンスロート』とかの頃だから、もう10年以上前になるんだなー。でも、作家やイラストレーターを追いかけつつ読んでいくと、これはこれで面白くて、病みつきになりそうです。


■で、そんなリハビリの最中に手に取ったのが、『デアデビル』の第111号から始まったシリーズ“レディ・ブルズアイ”(http://www.marvel.com/catalog/DAREDEVIL.1998.111)。完璧ジャケ買いだったんですが、これがなかなかよく出来ていて、ライターを調べてみると、エドブルベイカーという人(http://www.edbrubaker.com/index.html)。もともとはインディの作家だったんですが、2000年からDCコミックスに参加、『バットマン』を手がけたり(このなかには、グレッグ・ルッカと組んだ『ゴッサム・セントラル』もあります)、『キャットウーマン』の新シリーズ立ち上げに尽力したり。さらに2004年には、マーベルに移籍。『キャプテン・アメリカ』や『デアデビル』のライターを担当して、この両シリーズで、アメコミ界で最も栄誉があるアイスナー賞(ベスト・ライター部門)を2007年と2008年の2度受賞しています。しかも、かなりのノワール好きらしくて、そういう味わいは作品の随所から感じられます。うーん、確かに僕好みかも。


■……とまあ、そんなこんながありつつも、2月中にリリースされた諸々の営業報告です。


●『CONTINUE』Vol.44(太田出版

http://www.ohtabooks.com/continue/

コンティニューvol.44

表紙&第一特集は『ヤッターマン』。……ですが、そんなことはまったく関係なく(笑)、第二特集『ソウルイーター』の南雅彦プロデューサーへのインタビューと、この4月からテレビアニメ版が放映される『リストランテ・パラディーゾ』の原作者・オノナツメさんへのインタビューを担当。あと、恒例の「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」には、アンケートのみ参加しました(座談会には不参加)。ベスト10に『ミラーズ・エッジ』が入らなかったのは、何か意図があったんだろうか? 志田さん(http://shidaill.blog126.fc2.com/)か嶋田ケロくんなら選びそうな気もしたんだけど……。


●『ダ・ヴィンチ』2009年3月号(メディアファクトリー

http://web-davinci.jp/contents/guide/index.php

ダヴィンチ 2009/03月号

表紙は多部未華子で、第一特集は「CLAMP」。……でもやっぱり、そんなページとはまったく関係なく、担当したのは「あの人と本の話」のBUCK-TICK櫻井敦司さんへの取材&ライティング、およびレギュラーの「ミュージック ダ・ヴィンチ」(出ていただいたのはテイ・トウワさん)。櫻井さんの取材で感じたのは「やっぱ、この人はスゴいなあ」と。20年も同じメンバーでバンドをやるっていうのは、大変なことだ……なんて、ごく当たり前の事実を痛感します。あとテイさんへの取材は、彼のブログに取り上げられてて(http://www.towatei.com/booth/)、なんかこう気恥ずかしいやらなにやら。


●『テイルズ オブ マガジン』Vol.6(角川書店

Tales of Magazine (テイルズ・オブ・マガジン) 2009年 03月号 [雑誌]

引き続き、巻頭のアニメ版『テイルズ オブ ジ アビス』ページを担当。Vol.4で募集した前半戦ベストエピソードの投票結果も掲載しております。特集全体のディレクションと原稿チェックを担当。


●『メガミマガジン』2009年4月号(学研)

http://www.e-animedia.net/b_megami.html

Megami MAGAZINE (メガミマガジン) 2009年 04月号 [雑誌]

表紙は『とらドラ!』かー。レギュラーの「キャラクターキャッチアップ」のみ。今月は4ページと少なめでした。


●『S-Fマガジン』2009年4月号(早川書房

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/720904.html

S-Fマガジン 2009年 04月号 [雑誌]

こちらも、レギュラーのゲームコラムのみ。取り上げたのは、セガの『428〜封鎖された渋谷で〜』と、任天堂アナザーコード:R 記憶の扉』の、Wii専用アドベンチャーゲーム2本。一部の定番ソフト(『Wii Fit』『Wiiスポーツ』『マリオカートWii』)以外は、ほとんど壊滅的なまでに売れていない国内のWiiソフトですが、探せば面白い新作はあるわけで。


●『今日の5の2』秋巻(キングレコード

http://www.starchild.co.jp/special/gononi/

今日の5の2 秋(初回限定版) [DVD]

リリースの続く『5の2』DVDシリーズですが、いよいよ秋編に突入。第7話〜第9話まで収録されているんですが、見逃せないのが第8話の上坪亮樹絵コンテ・演出回。彼は、第2話でも演出・絵コンテを担当しているんですが、この第8話の破壊力はそれ以上。悪ノリがさらに増してます。学級日誌の当番は、河合ツバサと平川ナツミ。ジャケットおよび封入パンフレットの構成・テキストを担当。


●『二十面相の娘』第8巻(ジェネオンエンタテインメント/松竹/フジテレビ)

http://www.chico-tv.com/

二十面相の娘 8 [DVD]

長らく続いてきた『二十面相の娘』DVDシリーズも、これで終了(第21・22話を収録)。お疲れさまでした。恒例のスタッフインタビューでは、シリーズ構成・脚本の土屋理敬さんにお話を伺っています。ジャケットおよび封入パンフレットの構成・テキストを担当。


●『ミチコとハッチン』第2巻(メディアファクトリー

http://www.michikotohatchin.com/

ミチコとハッチン Vol.2 [DVD] ミチコとハッチン Vol.2 [Blu-ray]

第3話と第4話を収録。ジャケットおよび封入パンフレットのライティングを担当しました。パンフレットでは、ミチコ&ペペリマの「ファッションチェック!」というお遊び企画をやったのですが、そのためにファッション誌をドカ買いして、文体を真似てみたんですが、これがなかなかうまくいかなくて、かなり四苦八苦。最終的には、DVD制作を担当してくれているIさんのおかげで、面白いものになった気がします(笑)。



■そんでもって、脚本で参加させていただいているアニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/index.sms)も、絶賛放映中。いよいよバトスピチャンピオンシップも本格的に始まって、盛り上がってきてるんじゃないでしょうか(ちょっと不安)。僕が脚本を担当した第25話「キラリ輝石の目覚め」は、明日3月1日放映です。いよいよバシンとキイロコが、チャンピオンシップ第2回戦で激突! キイロコの想いは、ニブチンのバシン君に伝わるのか? そして、Jとバシンの勝負の行方は……。てな感じのお話になっているハズ。あと、DVDのリリースも始まってますので、こちらもよろしくお願いします。

(※う、う……。操作を誤って、一度消去してしまいました。2009.4.23復旧させました)

2009年1月・後半の営業報告

■イベント「アニメの門〜場外乱闘編〜」の落穂拾い的に、宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』について書き始めていたのですが、想像以上に長くなりそうだったので、一時中断。最近、年を経るごとに筆が遅くなってる気がします……。


■で、1月中にリリースされた諸々の営業報告です。


●『亡念のザムド』公式サイト

http://www.xamd.jp/

最終話の配信も始まった『亡念のザムド』ですが、宮地昌幸監督へのインタビューがアップされました(http://www.xamd.jp/special/interview/index.html)。この取材のとき、監督はちょうど最終話の詰めの作業をやってる真っ最中、しかも僕自身、取材の直前に一気に作品を見直してたりしたせいで、妙なテンションのインタビューに。有体に言えば、「なんで『ザムド』はこういう作品になったのか?」を、しつこく聞き出そうとしてる、というか(笑)。まあ、これだけ読んで『ザムド』を理解した気になってもらっても困るんですが(というか当然、作品を観た人が思ったこと、考えたことがすべてなわけで)、こういう形の――というのは、つまり読者がある程度、『ザムド』という作品を観てくれている、という前提のインタビューは、公式サイトという場所だからこそできたことなのかな、と思ったりもします。


●『メガミマガジン』2009年3月号(学研)

http://www.e-animedia.net/b_megami.html

Megami MAGAZINE (メガミマガジン) 2009年 03月号 [雑誌]

レギュラーの「キャラクターキャッチアップ」。4月新番の情報がボチボチ出揃ってきましたが、個人的には、池端隆史監督の『大正野球娘。』とか、『いぬかみっ!』(つーか世間的には『なのは』2・3期か)の草川啓造監督『アスラクライン』あたりが楽しみ。あと、僕の担当記事じゃないですが、『かんなぎ』の山本寛監督と新房昭之監督の対談が、興味深かったです。


●『薬師寺涼子の怪奇事件簿』第4巻(キングレコード

http://www.starchild.co.jp/special/yakushijiryouko/

薬師寺涼子の怪奇事件簿 第4巻 [DVD]

薬師寺』はこれで最終巻。ジャケットまわりのあらすじのほか、封入パンフレットのうち、原作者・田中芳樹とシリーズ構成・川崎ヒロユキの対談、そして音響監督・若林和弘、効果・野口透と監督の鼎談記事を担当しました。野口さんのお話が非常に興味深くて、効果音がいかに画面(と作品)に貢献するのか、すごくタメになりました。紙幅の都合(とけっこう危険な話題が多かったので)、あまり使えなかったのが、ちと残念。


●『今日の5の2』夏巻(キングレコード

http://www.starchild.co.jp/special/gononi/

今日の5の2 夏(初回限定版) [DVD]

『5の2』は、これが2巻目(第4話〜第6話まで収録)。学級日誌の当番は、今井コウジと浅野ユウキの2人です。ジャケットおよび封入パンフレットのテキストを担当。


●『二十面相の娘』第7巻(ジェネオンエンタテインメント/松竹/フジテレビ)

http://www.chico-tv.com/

二十面相の娘 7 [DVD]

二十面相の娘』は、いよいよクライマックス目前(第18話〜第20話まで収録)。封入パンフレットでは、音楽の三宅一徳さんにインタビューしました。この作品のサントラが面白くて、ビッグバンドジャズっぽい雰囲気に和洋折衷というか、独特の雰囲気が再現されてて、聞き応えがあります。あと平野綾が無理矢理、フランス語で歌ってるニセシャンソン(!?)も、面白いです。


■あと、絶賛放映中のアニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/index.sms)。DVDのリリースが2月27日からスタートします。

バトルスピリッツ 少年突破バシン1 [DVD]

テレビで見逃してしまった……という方はぜひ。

新房昭之監督作をめぐって

■先日告知をした「アニメの門〜場外乱闘編〜VOL.6」、無事終了いたしました。おかげさまで、大勢のお客さんにご来場いただけて、ホッとひと安心。会場で発表された、アニメ十大ニュースの詳細は、藤津さんのサイトで紹介されています(http://blog.livedoor.jp/personap21/archives/65172692.html)。


■で、イベント終了後の打ち上げの席で、ライターの前田久くん(id:mae-9)から「SHAFTが注目だったのは一昨年でしょう」と指摘をいただいて、いや、まったくそれはその通り。……なんですけど、むしろ僕の念頭にあったのは、森義博と鈴木利正が演出・コンテをやった『かのこん』第6話とか、『ひだまりスケッチ』第1期のチーフディレクターを務めた上坪亮樹によるテレビアニメ版『今日の5の2』の第2・8話、あとこれはステージ上でも話した福田道生の初監督作品『ヒャッコ』でした。彼らはそれぞれ、SHAFT作品(というか、新房昭之監督の作品といった方がいいかと思うのですが)に関わる以前から活動している演出家なわけですが、上に列記した(SHAFT制作ではない)作品の担当話数を観ると、どうもある共通点がある。それはもしかすると、『月詠 -MOON PHASE-』や『ぱにぽにだっしゅ!』『ネギま!?』といった諸作での演出・コンテとしての経験が、かなり直接的な形で、彼らのフィルムに現れ始めているんじゃなかろうか。……そんなふうな感じがあるのです。


■さて、その共通点というのは、どういうものなのか。ざっくり言うと「いかに画面を構成するか」という問題意識なのですが、それは文字の多用(しかもその文字は、さまざまなフォントや手書き文字など、複数の種類が併用される)だったり、書き割り風の背景だったり、あるいはキャラクターのバストアップを回避するような大胆な画面レイアウトだったり、いろんな表れ方をしている。いわば私たちが慣れ親しんでいる「リアリズム」の技法の外、とも言えるかもしれない。


■そこで思い出したのが、去年発表された黒瀬陽平id:kaichoo)の論文「キャラクターが、見ている」(『思想地図』vol.1に所収)のことです。実際、この論文では新房昭之監督の『ぱにぽにだっしゅ!』についても言及されていて、例えば、結論部で討議されている京都アニメーションの諸作よりも、むしろSHAFT作品の読解として読んだ方がすんなりくるところが多い。そしてこの論文の面白いところは、遠近法的な技法とは異なる技法が映像を形作っている。その運動に注目しているところにあるわけです。


■黒瀬は、この論文のなかで、遠近法と対立する(あるいは、そうした遠近法をも内包する、オルタナティブな)技法として――美術の世界ではさまざまな議論があった、としながらも――イコンやモザイク画に代表される「逆遠近法」という技法(というか概念)を提出しています。それは、彼の言葉を借りれば、「空間を成立させる超越的な視点を、画面の内側に設定する技法」ということになるのですが、そこで問題になるのは、遠近法によって実現されるリアリティ(もっともらしさ)ではない。むしろ、ひとつひとつの画面を、いかに“絵”として成立させるのか。それこそ、聖者や聖母が描かれたイコンのような“絵としての強度”こそが問題となる。


■新房監督の作品を見ていて否応なく気づかされるのは、画面のなかで起こる出来事が、いわゆるリアリズムの範疇に収まりきらない“余剰”を孕んでいるということです。例えば、いわゆる黒板ネタ。カットが切り替わるごとに、黒板に書かれている文字がどんどん変わっていくわけですが、「誰が、どのように黒板の文字を書き換えているのか」は、まったく問題にされない。そこにリアリズムは存在しない。あくまで「それはそういうもの」として、画面が構成されているわけです。宇宙人やチュパカブラが跋扈したかと思えば、キャラクターがごく当たり前のように死んだり生き返ったりし、鼻血を出す宮前かなこが、次のカットでは平然と笑顔を浮かべていたりもする新房監督の作品では、むしろリアリティを回避するために、思いつく限りのありとあらゆる手法が動員されている。――いや、遠近法的なリアリズムさえも、“絵”を作るためのひとつの手法でしかない。そんな印象があります。


■去年、『まりあほりっく』の取材で新房監督にお話を伺ったときに、強く印象に残ったのは「背景を見ただけで、その作品だとわかるようにしたい」という言葉でした。「だって、白土三平のアニメって、背景だけの画面(いわゆる「BGオンリー」ですね)を見ても“白土三平だ”ってわかるでしょう?」と。その言葉から、いかに新房監督が「ひとつの画面を成立させること」に執着しているか、がわかるような気がします。


■もちろんアニメは――それは「映画は」といっても同じことですが――絵画とは異なる芸術形態です。なによりも映画は、時間という、これまた厄介な要素を、不可避的に含んでしまう。始まりから終わりまで“絵”で埋まっている、ある一定の時間を、私たちは「映画」と呼んでいる、とさえ言っていい。黒瀬論文の弱点は実は、ここにあるのではないかと思うわけです。黒瀬が、この論文で大きく依拠している東浩紀id:hazuma)のデータベース消費論――これはつまり“作品”を、何度も繰り返し引用可能な、いわばキャラクターのデータベースソースに見立てるという考え方ですが、そこではなかば必然的に、作品の“無時間性”が強調されている。この“無時間性”に引きずられて、映画が時間芸術であることが、ほとんど省みられていないように思いました。どれだけキャラクターが成長しなくても、1本のフィルムには始まりがあり、終わりがある。否応なしに、ある一定の時間が流れざるを得ないのです。蓮実重彦がある文章のなかで書き記しているように「上映時間零秒」の映画というのは、「ありうべからざる映画」なのです。


■言い換えれば、新房監督の諸作は、そのような「ありうべからざる映画」を夢想するような、そういう類の映画なのではないか。


■あと付け加えておくと、東浩紀の言う「データベース消費」的な考え方は、なにもごく最近始まったものではない。例えば、ワーナー・ブラザーズのアニメーション・シリーズとして、1930年代から始まった「ルーニー・テューンズ」。そこでは、バッグス・バニーダフィー・ダックトゥイーティー、シルベスターといったキャラクターたちが、無時間的な世界のなかで、終わることのない狂騒を繰り返している。先日、「ルーニー・テューンズの黄金時代」というドキュメンタリーを見ていたのですが、そこで、ワーナーに彼らのスタジオ(ターマイト・テラス)を売却したプロデューサー、レオン・シュレジンガーに対して、関係者のひとりが「彼は、自分がうまくやったつもりでいた。なにより大切な“キャラクター”を売り渡したことに気づいていなかったんだ」と述べていたのが、印象的でした。つまり「ルーニー・テューンズ」の“売り”は、なによりもキャラクターだったのです。


■バッグスたちの際限ない追いかけっこ――そして、彼らの後継者であるMGM社の「トムとジェリー」の楽しさは、なによりも、変幻自在なデフォルメーションにあります。爆弾で吹っ飛ばされ、倒れてきた壁にペシャンコにされ、傘やら瓶やら玉やら、ありとあらゆる形状に変化する、まるでゴムのような彼らの身体は、どこまでも柔らかく、素早い。そこでは、既存のリアリズムなど、はなから問題とされていません(そこがディズニーとの大きな違いでしょう)。そして、この速さと強度は、どこか僕に、日本映画の50年代を支えた何人かの監督――鈴木清順井上梅次市川崑中平康、そしてなにより増村保造の作品に漂う「モダニズム」を想起させるのです。

(※2009.2.3追記 『ネギま!?』のタイトルが間違ってたり、東浩紀さんが「はてな」に復帰してたのに今ごろ気づいたりしたので、修正しました)

2009年1月の営業報告

■年が明けても、あまり何か新しくなった気分がしなくて、相変わらずダラダラとしていますが、そういえば! 来週末、アニメ評論家の藤津亮太さんが主宰するイベント「アニメの門」に出させていただくことになっていたのでした。

アニメの門〜場外乱闘編〜VOL.6 総括2008
出演 藤津亮太小川びい宮昌太朗(司会)、大河内一楼(ゲスト)
日時 2009年1月17日(土) OPEN18:30 / START19:30
会場 Naked Loft http://www.loft-prj.co.jp/naked/
¥1,000(+1drinkから)
Naked Loft店頭にて電話予約、受付けます
Naked Loft 03-3205-1556(16:30〜24:00)

■「総括2008」とあるように、去年のアニメ関連の話題をザザッと振り返る恒例企画の第2回(かな?)なのですが、先日、出席メンバーで打ち合わせをして、まあ、ムチャクチャなランキングになりそうだなあ、と(笑)。小川さんがどれくらい暴れてくれるかが、当日の見どころでしょう。


■でもって、雑誌関連の仕事がいくつかリリースされています。


●『メガミマガジン』2009年2月号(学研)

http://www.e-animedia.net/b_megami.html

Megami MAGAZINE (メガミマガジン) 2009年 02月号 [雑誌]

新作&放映中作品を扱う「キャラクターキャッチアップ」(レギュラー)が6ページ。ページ数もページ数だったんですが、扱ったタイトル数が(たぶん)過去最高の50タイトル! さすがに大変でした。


●『GAME JAPAN』2009年2月号(ホビージャパン

GAME JAPAN (ゲームジャパン) 2009年 02月号 [雑誌]

今月は『鉄拳6BR』のみ。ゲームの仕事、ほとんどやらなくなったなあ。


●『ダ・ヴィンチ』2009年2月号(メディアファクトリー

http://web-davinci.jp/contents/guide/index.php

ダヴィンチ 2009/02月号

成海璃子さんが表紙の、第一特集は「BL」特集(なぜ今頃!?)。……でも、担当したのは、レギュラーの「ミュージック ダ・ヴィンチ」のみ。インタビューしたのは、1月21日にアルバム『ふりぃ』でメジャーデビューする、注目の女性アーティスト・阿部真央http://www.myspace.com/abemao)。もうすでにいくつかのメディアで取り上げられていますが、彼女は、今年最も注目を集めるアーティストのひとりになりそうです。音は、アヴリル・ラヴィーンとかアメリカのエモ/ギターポップ直系、でもときに情念さえ感じさせる歌詞と唄。滾ってます。


●『ニュータイプ』2009年2月号(角川書店

Newtype (ニュータイプ) 2009年 02月号 [雑誌]

マクロスF』が表紙で、『鋼の錬金術師』第2期とか『グレンラガン劇場版』とか『エウレカ劇場版』とか、今年注目の新作が目白押しの新年号。……でも担当したのは、そんな楽しそうなところとは全然関係なくて、『とらドラ!』と『まりあほりっく』と『みなみけ おかわり』の3本。しっかし、『まりほり』は面白いねえ。


●『テイルズ オブ マガジン』Vol.5(角川書店

Tales of Magazine (テイルズ・オブ・マガジン) 2009年 02月号 [雑誌]

今月も引き続き、アニメ版『テイルズ オブ ジ アビス』特集。かなり切羽詰った進行になってしまったんですが、そのせいか、もうちょっとページネーションを工夫できたかもなあ。特集全体のディレクションと原稿チェックを担当。


■DVD関連も引き続きリリース中。『薬師寺涼子の怪奇事件簿』第4巻と『今日の5の2』夏巻(第2巻)が1月21日、『二十面相の娘』第7巻が1月23日に、それぞれ発売になります。詳細は、また追ってアップしますね。で、それに加えて


●『ミチコとハッチン』DVD・第1巻(メディアファクトリー

http://www.michikotohatchin.com/

ミチコとハッチン Vol.1 [DVD] ミチコとハッチン Vol.1 [Blu-ray]

山本沙代監督の“女二人さすらいのロードムービー”が、いよいよDVD&BDシリーズ開始。ヒリヒリするような叙情と残酷……。ウチの事務所(アンダーセル)のコヤマシゲトくんも、ミチコたちが乗っているビッグバイクのデザインで参加しております。僕は、ジャケットまわりのテキストと封入パンフレットを担当しているんですが、問題は、この封入パンフレット。リリースでは《フライヤータイプブックレット》、なんてカッコよさげに書いてありますが、実はこの『ミチハチ』、DVDとブルーレイの同発。でもって、ご存知の通り、DVDとブルーレイではパッケージの大きさが違うわけです。ということは必然的に、パンフレットもDVD用とブルーレイ用の、それぞれに別の版下を作らなきゃいけない。つまり、デザイナーへの負担も――2倍とは言わないまでも、1.5倍くらいにはなる。で、それを回避するために、あらかじめバラバラのチラシっぽい形式にしてみたわけです。他の同発タイトルは、どうなっているのかしら? ちょっと気になるところ。


■あと、アニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/index.sms)も、絶賛放映中です(毎週日曜朝7時からテレビ朝日系列にて)。メガネコたんもいよいよ、カードバトラーの仲間入り? ……ってな展開になっておりますが、僕の脚本担当回は1月18日放映の第19話「タッグ痛快ライバルズ」。2回目のバトスピチャンピオンシップに向けて、どんどん面白くなっていきますので、お楽しみに!

おめでとうございます

■新年、明けましておめでとうございます。というか、本当は年末に一度、更新するつもりだったんですが、ダラダラしてたら年が明けてしまいました。テヘ(照)。ダメだなあ……。ホントは『ポニョ』のことだったり、『思想地図』第1号に掲載された黒瀬陽平の論文「キャラクターが、見ている」のこととか、いろいろ書きたいことはあったんですが、なかなかどうして腰の重さが年々ヒドくなるばかり。営業報告を毎月アップするのさえ、やっとという有り様で。いやもう、まったく面目ない。


■そんなことはさておき、唐突に、去年の映画ベスト5を挙げたりしたいと思います。一昨年くらいから、なるべく時間を見つけて映画(主にアメリカ映画)を観るようにしているのですが、あんまり「まとめておこう」という気持ちにならなくて、ただ、ついさっきまでmixiの自分の日記を見てたら、急にそんな気になったのでした。とはいえ、『接吻』とか『レディ・アサシン』とか『ホット・ファズ』とか『アンダーカヴァー』とか、観たかったのに観られてないモノも多いんですけどね。

1) 『トウキョウソナタ』(黒沢清
2) 『ダージリン急行』(ウェス・アンダーソン
3) 『アイアンマン』(ジョン・ファヴロー
4) 『エグザイル/絆』(ジョニー・トー
5) 『コロッサル・ユース』(ペドロ・コスタ
次点 『おろち』(鶴田法男)
   『デス・レース』(ポール・W・S・アンダーソン
   『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(ポール・トーマス・アンダーソン


■1)は、待ちに待ってた黒沢清の新作。『ニンゲン合格』以来の“家族映画”になると聞いてワクワクしていたのですが、いやはやこちらの予想を軽く上回って、素晴らしい出来。特に、父親の失職がバレて以降の、あまりにハードボイルドな一家離散の展開(と、あまりに活劇的な画面)には唖然とするほか、ありません。小泉今日子役所広司の逃避行(?)の果てに広がる、真っ黒な海。水平線にきらめく光の、あまりにも美しすぎる輝き。


■2)は、こちらも待望のウェス・アンダーソンの新作。『ロイヤル・テネンバウムズ』で“アメリカ的”であること、それを喜劇として描くこと、を徹底したウェス・アンダーソンは、『ライフ・アクアティック』の“ニセ海底二万マイル”を経て、ついにインドにたどり着いてしまった……と。引用マニアの彼だけに、今回はインド映画をサンプリングしてるんですが、ただのサンプリングに終わるのではなくて、その先に――なにか、映画という芸術形態が根源的に持っている“出鱈目さ”というか“いい加減さ”の力、みたいなものが、急に迫り出してくる瞬間がある。特に中盤、主人公の三兄弟がとある事件に遭遇して、そこから一切に音が映画から消えてしまう時間――死んだ子供を両手に抱えながら、村を駆け抜けていく長回しの横移動撮影のシーンは、何度思い返してもゾクゾクしてしまう。


■どーも去年は、アメリカのアクション映画に圧倒される瞬間が少なかったんですが、1本だけ選ぶなら……というわけで、3)の『アイアンマン』。なんといっても、主人公トニー・スタークのキャラクター設定が抜群。やたらと口が達者でタフなんだけど、どこか間が抜けていて、すごく人間臭いヒーロー(なので、やたらとスッ転ぶシーンが多い)。この憎めないキャラを、今ノリにノってるロバート・ダウニー・Jr.が演じるんだから、面白くならないハズがない。初めて完成版のアイアンマン・スーツを装着して、カリフォルニアの空を駆けめぐる場面(「ヒャッホー!」シーン by とみさわ昭仁さん)も素晴らしいが、そのあとで、高級スポーツカーを破壊しまくっちゃうところもよい。……にしても『ダークナイト』しかり『ハンコック』しかり、去年のヒーロー映画は“ひとりの凡人がヒーローになるまで”を描く作品ばっかり。なんでなんだろう?


■4)は、年末になってようやく公開された、ジョニー・トーの2006年作。僕なんかが言うまでもなく、各方面で絶賛されているわけですが、ぶっちゃけ『エレクション』よりは落ちるかなあ、と思ってしまいました(観たときに体調が最悪だったので、その影響もありそうな気がしないでもない)。でもやっぱりね、トーさんには、ヒリヒリした夜の叙情を求めてしまうわけです。そんでもって、夜どころではなくて、全編にわたって画面がヒリヒリし続ける恐るべき作品が5)。住み慣れたファヴェーラを追い出され、近くの近代的なアパートに強制移住させられた人々の生活を、ひたすら追いかけ続けるんですが、ウェットな情感を一切切り離した、真にハードボイルドな映画というか。一瞬たりとも画面から目が離せないというか、観ている間、ずっとサンドペーパーでマッサージされているような気分。イーストウッドの『許されざる者』とか、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』のような、異常な緊張感が画面に漲っている。


■で、次点の3本は、もうひとつ抜けると面白くなるのに! と思った作品群。いや、もう十分に面白いんですけど、ちょっと頭でっかちな部分が目立ったかなあ、と。


■ではまあ、そんなわけで、今年もよろしくお願いします。そして、もっともっと面白い映画と、今年もたくさん出会えますように!

2008年11・12月の営業報告

■なんだかもう、すっかり年の瀬ですねえ……。バタバタと忘年会シーズンに突入しておりますが、先日、小学館ガガガ編集部の謝恩会にお邪魔しました。で、二次会会場を出た路上で、編集m氏から唐突に「宮さん! こちら、××さん!」と、若い男子を紹介されて、全然名前に聞き覚えがなかったので、酔った頭で「知らない、誰?」とつっけんどんに返事したのですが(その態度もどうかと思う)、家に帰って、もらった名刺に書かれてたサイトにアクセスして、その男子が樺薫さん(http://cumberland.blog38.fc2.com/)だったことに気づく。『めいたん』で『藤井寺さんと平野くん 熱海のこと』の人じゃん! 全然知ってるよ! つーか、ちゃんと紹介してよ、m氏!


■てなことはさておき、先月と今月の営業報告です。


●『狂乱家族日記 アニメコンプリートブック』(エンターブレイン

http://www.kyouran.jp/pc/index.html

狂乱家族日記 アニメコンプリートブック

日日日の同名ライトノベルを原作にした、アニメ『狂乱家族日記』の公式ムック。先月の『かのこん』に引き続き、編集を担当したねこまた工房さんからお誘いを受けて、全26話のストーリーガイドとキャラクター紹介、あとスタッフインタビューをやりました。収穫はやはり、スタッフ取材かな。黒田監督の「アドリブでやろうと思った」という発言からもわかるように、可能な限り、現場スタッフのアイデアを汲み上げようとする姿勢が、この作品に一種の“熱”と“スピード”をもたらしていたのだなあ、と思いました(もちろん、それは非常にコントロールが難しいゆえに、リスクの高い方法でもあるのですが)。黒田やすひろ監督、キャラクターデザインに古賀誠、制作はノーマッドという同じ布陣で、来年には『よくわかる現代魔法』のアニメ化が進められる模様(http://www.gendaimahou.com/)。「また難しい原作に挑戦するなあ」と思ったりもしますが、こっちも楽しみ。


●『薬師寺涼子の怪奇事件簿』DVD・第3巻(キングレコード

http://www.starchild.co.jp/special/yakushijiryouko/

薬師寺涼子の怪奇事件簿 第3巻 [DVD]

引き続き『薬師寺涼子』のDVDシリーズ、ジャケットとパンフレットのテキストをお手伝いしています。今回は、監督と美術チーム(美術監督の緒続学さんと美術設定の金平和茂さん)、および監督と撮影監督・伊藤邦彦さんのインタビュー取材を担当。「美術」と「撮影」って裏方に思われがちで、実際そうなんですが、でも今のアニメーションにおいて、すごく重要な役割を果たしてると思うのです。その一端でも伝わればいいかなあ、と。


●『二十面相の娘』DVD(ジェネオン/松竹/フジテレビ)

http://www.chico-tv.com/

二十面相の娘 5 (初回限定版) [DVD] 二十面相の娘 6 [DVD]

でもって『二十面相の娘』も、折り返し地点。11月には第5巻が、12月には第6巻がリリースされます。封入パンフレットとジャケットの構成・執筆を担当。


●『今日の5の2』DVD・春巻(キングレコード

http://www.starchild.co.jp/special/gononi/

今日の5の2 春(初回限定版) [DVD]

今月からリリースがスタート。ジャケットのあらすじまわりとパンフレットの構成・執筆を担当したんですが、パンフレットに関しては「ちょっと変わった感じにしてほしい」というオーダーがあり。で「学級新聞はどうでしょう?」とか、アイデアを出し合った結果として“学級日誌”っぽくまとめてみました。劇中のキャラクターが当番として、その回のエピソードをまとめつつ、それに先生がツッコミコメントを入れる……という感じ。この巻の担当(当番)は、カズミちゃんとメグミちゃん。デザイナーさんが奮起してくれて、なかなか面白いアイテムになったかな、と思います。


●『ダ・ヴィンチ』2009年1月号(メディアファクトリー

特集は、年に一度の「ブック・オブ・ザ・イヤー」。というわけで“セクスィー部長”こと沢村一樹さんと、女優・岩佐真悠子さんの対談記事を担当。あと、レギュラーの「ミュージック ダ・ヴィンチ」ではレコード評に加え、4人組のロックバンド、フランプールへのインタビューをやっています。どっちも進行がえらくギリギリで、ちょっとドキドキしました。


●『ニュータイプ』2009年1月号(角川書店

この号は、もしかすると『とらドラ!』だけか?(見本誌がまだ届いてないことに、今気づいた)。設定資料集的な4ページ記事。3ヶ月で終わるのかと思ってたら、2クールだったんですね、『とらドラ!』。オープニングの「プレパレード」は、iPodでフル稼働中。


●『テイルズ オブ マガジン』Vol.4(角川書店

引き続き、アニメ版『テイルズ オブ ジ アビス』特集を担当。この号からは、ほぼ事務所の野口くんがページを仕切っていて、僕がやったのは全体の構成と原稿チェックのみ。


●『メガミマガジン』2009年1月号(学研)

レギュラーの「キャラクターキャッチアップ」のみ。4ページと若干、ページが少なかったので、作業的には楽だった……かといえば、そんなことはなかったりする。


●『GAME JAPAN』2009年1月号(ホビージャパン

jubeat』『鉄拳6BR』などを担当。……って、先月と変わってないなー。


■こうして振り返ってみると、とにかく『狂乱家族日記』のムックと『今日の5の2』でいっぱいいっぱいだったんだな(笑)。


■知り合いから「宣伝してください!」と言われたので、告知しておきます。年末に開催されるコミックマーケット75に、ストーリーライダーズとして参加しています(http://www.storyriders.net/comike75.html)。場所は、2日目(29日)の「東ク-44a」。新刊は『脳Rギュル』のスピンアウト作品を集めた、オムニバス短編集『裏Rヂュル 四十五の恋』。『脳Rギュル』に関わったライター陣が新作を書き下ろし! ……なのですが、僕はまったく時間がなくて、参加できず(泣)。でも、トミイさんの表紙は本気で素晴らしいですし、わんぱくさんも新作を描き下ろしてくれたようです。スゴい! 当日は、ブースのお手伝いに行くつもりなので、お時間があればぜひ。


■あと、アニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/index.sms)も、絶賛放映中(毎週日曜朝7時からテレビ朝日系列にて)。次の放映は、年明け1月4日ですね。最初のバトスピチャンピオンシップを終えて、これからどんどん盛り上がるハズ……なので、ぜひともお楽しみに!