2009年3月の営業報告
●『ポケモンを創った男』(メディアファクトリー)
■ご報告がギリギリになってしまいましたが、以前、太田出版から出した田尻智のインタビュー集『ポケモンを創った男』が、このたび文庫化されます。ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、田尻氏は、いわずと知れた世界的ヒットゲーム『ポケットモンスター』の生みの親。また、アーケードゲーム時代に「ゲームフリーク」という――当時、まだ珍しかったゲーム同人誌を自費出版し、その後、商業ライターとして活躍していた先輩ライターでもあります。
■この本は、もともと「CONTINUE」誌に4回にわたって掲載されたロングインタビューをまとめたものですが、そのインタビューは『ポケモン』に至るまでの――彼のバックグラウンドというか、プライベートヒストリーを聞こう、という意図のもと行われました。結果として、70年代中盤から90年代までのさまざまな文化事象を振り返るような内容になりました(そのぶん、肝心のビデオゲームに関する話題が深く掘り下げられなかった感もあるのですが……。これはまあ、僕なんかよりももっと適任の方がいるのではないか、という気がします)が、今回の文庫化に際して、改めて読み直してみて――いくつか風化してしまった、というか、僕自身の問題意識が他に移ってしまっている部分もありつつ、大枠では決して古びていないものになっているな、と思いました。
■ある意味、1970年代から1980年代という時期は、ここ日本において、最も“サブカルチャー”が“サブ”カルチャーたりえた時代だったのではないか、と思います。言い換えれば、瑣末な情報・知識の「瑣末さ」が、ある種の輝きを持っていた時代、というか。ハイカルチャーとポップカルチャーとサブカルチャーが、一体となって、ある強度を持ちえていたように(今の視点からでは)見えます。そして、その「瑣末さ」は「重厚長大」な文化や社会に対するカウンターとして機能していた。しかし、たぶん90年代に入ると、そのような「瑣末さ」が機能失調を起こしたのではないか、と思うのです。そしてそこで田尻は、自分の幼少時代の経験を、徹底的に抽象化・純化することで『ポケットモンスター』を生み出した。今回、この本を改めて読み直してみて、実はそこが『ポケモン』の凄さだったのではないか、と思ったりしました。
(※この項、誤字とか読みにくい箇所とかがあったので、若干加筆しました。2009.4.25)
■さて、そんなこんながありつつ、すっかり遅くなった3月リリース分の営業報告です。
●『ダ・ヴィンチ』2009年4月号(メディアファクトリー)
http://web-davinci.jp/contents/guide/index.php
表紙は竹内結子&阿部寛で、第一特集は海堂尊。で、担当したのはレギュラーの「ミュージック ダ・ヴィンチ」。今月のレコメンドでは、MCUの『SHU・HA・RI』を取り上げました。アルバムが彼の原点回帰(?)的な内容だったこともあって、80年代の東京のサブカルチャーのことを聞いてみたり。まあ、本文ではばっさりカットしちゃってるんですが。
●『テイルズ オブ マガジン』Vol.7(角川書店)
http://www.kadokawa.co.jp/mag/bknum.php?tp=comptiq
先月に引き続き、アニメ版『テイルズ オブ ジ アビス』のページを担当。最終回直後の号ということもあって(というか、実際に作業をしているときは、まさにクライマックス直前だったのですが)、けっこうバタバタの進行になりました。全体のディレクションおよび原稿チェックを担当。
http://anime.webnt.jp/nt-backnumber/detail.php?mag=1&latest=1
表紙は『ガンダム00』。……ですが、まあやっぱり、そんなこととは関係なく、担当したのは『Phantom Requiem for the Phantom』と『とらドラ!』。ここのところ毎月、なんだかんだと『ニュータイプ』に記事を書かせてもらえてます。
●メーカー横断新作アニメガイド(フリーペーパー)
東京国際アニメフェアにあわせて、国内の主要ビデオメーカーが合同で出したフリーペーパー。内容は、これから放映・発売される新番組アニメの紹介がメイン。『07-GHOST』と『NEEDLESS』の2タイトルを担当しました(取材&テキスト)。……と、ここで勘のいい方ならおわかりの通り、どちらもエイベックス・エンタテインメントの作品。というわけで、エイベックスの映像部門が毎月発行しているPR用フリーペーパー「pam!」にも一部、原稿を書いてます。
●『STRANGE FICTION』(早川書房)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/720925.html
早川から《想像力の文学》という新しいレーベルが立ち上がったのですが(http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000230)、その刊行を記念してリリースされたもの(SFマガジン5月臨時増刊号)。同レーベルから、初めての長編小説『ミサキラヂオ』を出した瀬川深にインタビューをしています。彼の小説に繰り返し登場する“音楽”や“共同体”といったモチーフに焦点を絞って、お話を伺ったのですが、もちろん小説というのはそれほど単純明快なものではありません。インタビュー前に『ミサキラヂオ』のゲラを読んで深く感じ入ったのは、なによりもまず、瀬川が繰り出す言葉の繊細さ、そしてどこかおおらかなユーモアの感覚でした。ほぼ同年代からこういう作家が登場したことは、素直にとても心強い。そう思います。
あと、このムックには佐藤亜紀や佐藤哲也、北野勇作といった面々の短編小説が収められていて、どれも非常に面白く読めました。特に、円城塔と大谷能生、木下古栗の諸作がお気に入り。にしても、円城さんはすごいペースで短編を書いてるよなあ。
http://ichijinsha.co.jp/charamel/index.html
こちらは一迅社が出している、隔月の“萌え”系キャラクターマガジン。表紙は『かんなぎ』なのですが、担当したのは『劇場版天元突破グレンラガン 螺巌篇』。……って全然、萌えと関係ねえ!(笑) 『螺巌篇』のメインヒロインであるニア役の福井裕佳梨と中島かずきの対談取材がメイン。あと『キラメキ☆ヨーコBOX』の情報も載ってます。実は取材の際に『ヨーコBOX』の映像を見せてもらったんですが、これが実にいい! キャラデ・作画監督である錦織敦史の煩悩が炸裂した、素晴らしい一品。僕も買います。
●『メガミマガジン』2009年5月号(学研)
http://www.e-animedia.net/b_megami.html
表紙は『CLANNAD AFTER STORY』。担当は、レギュラーの「キャラクターキャッチアップ」のみでしたが、新番組直前の時期ということもあり、今月は6ページ! なんかいろいろと大変でした。
http://www.starchild.co.jp/special/gononi/
『今日の5の2』DVDシリーズも、これで最終巻。第10話〜第12話までを収録。学級日誌の当番は“噂の夫婦”こと、佐藤リョータ&小泉チカの幼なじみコンビ。『5の2』は、OADの発売も決まったみたいですね。
●『ミチコとハッチン』第3巻(メディアファクトリー)
http://www.michikotohatchin.com/
レギュラーでお仕事をさせてもらっている『ミチハチ』。この巻には第5話&第6話の前後編「愚か者たちのサウダージ」が収録されています。ジャケットおよび封入パンフレットのライティングを担当。
■あと、引き続き『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/index.sms)も放映中。中学編に入って、ちょっと雰囲気が変わってきました。僕が脚本を担当した第34話は、たぶん5月3日放映予定(てことは約2ヵ月ぶりになるのか)。でも、もしかしたらゴルフ中継が入って、10日になってるかも?