真夜中のファミリーレストラン

■深夜のファミレスが大好きだ。レンタルビデオ屋のAVコーナーと同じくらい好きで好きでしょうがない。「ファミリーレストラン」のくせにファミリーなんてどこにもいないところも好きだし、店員が超やる気なさげなのも好きだし、隣のカップルが「『ロード・オブ・ザ・リング』より『ハリー・ポッター』の方が面白い」みたいな話をしてるとこも好き。できれば場所は、新宿とか六本木とか渋谷とかじゃなくて、中野とか成増とか三鷹とか祐天寺とかがいい。


■そして、できればひとりがいい。友達や事務所の人間と一緒だと、どうにも会話に集中しがちになってよくない。自分が有意義な人生を送ってるような気になってダメだ。仕事が忙しくって忙しくってしょうがいないけど、夜中に突然牛肉が食いたくなって、外はガンガンに寒いのに出掛けちゃうみたいな、そういうのがベスト。


■だからバックパックには、単行本かマンガを1冊入れておく。時間潰しが必要だからだ。そして、小田扉のマンガは、電車のなかよりも家のベッドの上よりも公園のベンチよりも仕事机よりも、深夜のファミレスがよく似合う。僕にとって彼の「こさめちゃん」という短編は、古谷実の『僕といっしょ』やくらもちふさこの『天然コケッコー』と並ぶマスターピースだ。


■「こさめちゃん」には、笑いがって涙があって焦燥があって怒りがあって、そしてなによりも胸がツンと痛くなる場所がある。どうにもならないことをどうにもならないように描くってことに、僕はものすごく関心があって、なんとか自分でもできないものかなと思ったりする。


■……復帰一発目にこんな話題もどうかと思うのだが、でもまあ、いっか。