おめでとうございます

■新年、明けましておめでとうございます。というか、本当は年末に一度、更新するつもりだったんですが、ダラダラしてたら年が明けてしまいました。テヘ(照)。ダメだなあ……。ホントは『ポニョ』のことだったり、『思想地図』第1号に掲載された黒瀬陽平の論文「キャラクターが、見ている」のこととか、いろいろ書きたいことはあったんですが、なかなかどうして腰の重さが年々ヒドくなるばかり。営業報告を毎月アップするのさえ、やっとという有り様で。いやもう、まったく面目ない。


■そんなことはさておき、唐突に、去年の映画ベスト5を挙げたりしたいと思います。一昨年くらいから、なるべく時間を見つけて映画(主にアメリカ映画)を観るようにしているのですが、あんまり「まとめておこう」という気持ちにならなくて、ただ、ついさっきまでmixiの自分の日記を見てたら、急にそんな気になったのでした。とはいえ、『接吻』とか『レディ・アサシン』とか『ホット・ファズ』とか『アンダーカヴァー』とか、観たかったのに観られてないモノも多いんですけどね。

1) 『トウキョウソナタ』(黒沢清
2) 『ダージリン急行』(ウェス・アンダーソン
3) 『アイアンマン』(ジョン・ファヴロー
4) 『エグザイル/絆』(ジョニー・トー
5) 『コロッサル・ユース』(ペドロ・コスタ
次点 『おろち』(鶴田法男)
   『デス・レース』(ポール・W・S・アンダーソン
   『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(ポール・トーマス・アンダーソン


■1)は、待ちに待ってた黒沢清の新作。『ニンゲン合格』以来の“家族映画”になると聞いてワクワクしていたのですが、いやはやこちらの予想を軽く上回って、素晴らしい出来。特に、父親の失職がバレて以降の、あまりにハードボイルドな一家離散の展開(と、あまりに活劇的な画面)には唖然とするほか、ありません。小泉今日子役所広司の逃避行(?)の果てに広がる、真っ黒な海。水平線にきらめく光の、あまりにも美しすぎる輝き。


■2)は、こちらも待望のウェス・アンダーソンの新作。『ロイヤル・テネンバウムズ』で“アメリカ的”であること、それを喜劇として描くこと、を徹底したウェス・アンダーソンは、『ライフ・アクアティック』の“ニセ海底二万マイル”を経て、ついにインドにたどり着いてしまった……と。引用マニアの彼だけに、今回はインド映画をサンプリングしてるんですが、ただのサンプリングに終わるのではなくて、その先に――なにか、映画という芸術形態が根源的に持っている“出鱈目さ”というか“いい加減さ”の力、みたいなものが、急に迫り出してくる瞬間がある。特に中盤、主人公の三兄弟がとある事件に遭遇して、そこから一切に音が映画から消えてしまう時間――死んだ子供を両手に抱えながら、村を駆け抜けていく長回しの横移動撮影のシーンは、何度思い返してもゾクゾクしてしまう。


■どーも去年は、アメリカのアクション映画に圧倒される瞬間が少なかったんですが、1本だけ選ぶなら……というわけで、3)の『アイアンマン』。なんといっても、主人公トニー・スタークのキャラクター設定が抜群。やたらと口が達者でタフなんだけど、どこか間が抜けていて、すごく人間臭いヒーロー(なので、やたらとスッ転ぶシーンが多い)。この憎めないキャラを、今ノリにノってるロバート・ダウニー・Jr.が演じるんだから、面白くならないハズがない。初めて完成版のアイアンマン・スーツを装着して、カリフォルニアの空を駆けめぐる場面(「ヒャッホー!」シーン by とみさわ昭仁さん)も素晴らしいが、そのあとで、高級スポーツカーを破壊しまくっちゃうところもよい。……にしても『ダークナイト』しかり『ハンコック』しかり、去年のヒーロー映画は“ひとりの凡人がヒーローになるまで”を描く作品ばっかり。なんでなんだろう?


■4)は、年末になってようやく公開された、ジョニー・トーの2006年作。僕なんかが言うまでもなく、各方面で絶賛されているわけですが、ぶっちゃけ『エレクション』よりは落ちるかなあ、と思ってしまいました(観たときに体調が最悪だったので、その影響もありそうな気がしないでもない)。でもやっぱりね、トーさんには、ヒリヒリした夜の叙情を求めてしまうわけです。そんでもって、夜どころではなくて、全編にわたって画面がヒリヒリし続ける恐るべき作品が5)。住み慣れたファヴェーラを追い出され、近くの近代的なアパートに強制移住させられた人々の生活を、ひたすら追いかけ続けるんですが、ウェットな情感を一切切り離した、真にハードボイルドな映画というか。一瞬たりとも画面から目が離せないというか、観ている間、ずっとサンドペーパーでマッサージされているような気分。イーストウッドの『許されざる者』とか、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』のような、異常な緊張感が画面に漲っている。


■で、次点の3本は、もうひとつ抜けると面白くなるのに! と思った作品群。いや、もう十分に面白いんですけど、ちょっと頭でっかちな部分が目立ったかなあ、と。


■ではまあ、そんなわけで、今年もよろしくお願いします。そして、もっともっと面白い映画と、今年もたくさん出会えますように!