この日誌のタイトルについて。

■本当はマイク・デイヴィスの『要塞都市LA』について書こうと思ったのだけれども、あきらかに自分のなかで整理がついてないことがわかったので、この日誌のタイトルについて。


■連載のタイトルを考えたりするのは、すごく楽しい作業なのである。僕は10年近く原稿書きの仕事をやってきていて、でもまあ、連載を持ったことなんてそれほどあるわけじゃないんですが、でもやっぱりタイトルというのには不思議な力があって、その人の態度。みたいなものが如実に表れちゃうのが面白いところで、そうそう、フリッパーズ・ギターが雑誌連載のタイトルをすべて(だと思う。そんなに熱心に追いかけてたわけじゃないから、よく知らないけど)、モノクローム・セットの曲名からパクってたのとか見て、こういう感受性の人たちなんだよなあ、と思った。みたいな。そういう力がタイトルってものにはあって、決まっちゃうとそれなりに力が発揮されたりするわけです。書く内容に影響を与えるというか、引きずられるというか。


■僕が気に入ってるタイトルには、前にもちょっと書いた「インターナショナル・デートレイプ」のほかに、「スペキュレイティヴ・フリクション(Speculative Friction)」というのがあって、実際、某フリーペーパーの書評連載(といっても3回とかで終わった)のタイトルに使っていたのだが、これは70年代SFニューウェーブの標語のひとつだった「スペキュレイティヴ・フィクション(思索小説。とでも訳されてるのかな)」のパクりで、考えながら摩擦を起こしてるっていうか、そういうイメージ。でもまあ、3回で打ち切りになったのを見れば一目瞭然のごとく、内容がタイトルに追いついてないっていうか、タイトルがいちばんよかったというか、まあそういう感じで。あと、西島大介が何回言っても「スペキュレイティヴ・フィクション」って書いてて、それじゃ元ネタのまんまじゃん、ちゃんと「フ
リクション」って書いてくれよ、おねがいだから、と当時思っていましたね。懐かしい思い出だ。


■でまあ、この日誌が以前、undersellのサイト内にあったときは大塚くんの命名で「MIYASHOWTIME」、それを改名した今回の「歯車喫茶」は僕の命名。これは僕が池袋(正確には千川)に住んでいたときに実際に近所にあった喫茶店がモチーフで、その喫茶店(名前は失念)の店主はどうやら昔、そこで何かの工場をやっていたらしい。古びた鳩時計がコチコチ鳴って、もう何年掃除してないんだみたいなボロボロのカウンターの向こうには、ちょっとあから顔のオヤジさんがいつも不機嫌な顔でテレビを見ていた。で、コーヒーを飲んで支払いをすると、毎回、オマケで小さな金属の歯車をくれたわけです。そして最後につけ加えるように、こう一言「社会の歯車なんかになるなよ」。


■あれはいったいなんだったんだろう。と思いながら、この間たまたま近所を通ったついでにそこを訪ねてみたのだが、やはりというかなんというか、喫茶店はツブれていて、跡地にはファミリーマートができていた。