2008年10月の営業報告

■ぐはあ、忙しいのにかまけて、営業報告さえアップできないという、この惨状。先月のお仕事紹介です。


●『かのこんコンプリート』(メディアファクトリー

http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/books.php?id=20778

かのこん コンプリート

西野かつみの同名ライトノベルを元にしたアニメ『かのこん』、の公式ファンブック。編集を担当した、ねこまた工房さんからお誘いを受けて、全12話のストーリーガイドをやりました。地上波放映ができなかった『かのこん』ですが、本編を見て納得。というか、これをテレビでかけようとしていた製作陣は、ちょっとスゴいと思いました(笑)。とにかく、高田明男さんの力が入りまくった描き下ろしポスターが素晴らしすぎます。


●『スタジオボイス』2008年12月号(インファス)

http://www.studiovoice.jp/studio-voice/

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2008年 12月号 [雑誌]

あー、『スタジオボイス』は久しぶりだなあ。担当したのは『FREEDOM』森田修平監督へのインタビュー。Blue-ray版が発売されるんですね。でまあ、制作自体は随分前に終わっているので、改めて全体を振り返ってみて、という内容。原稿には使わなかったんですが、第7巻のアオとタケルの別れのシーンはあれでよかったのか? という(個人的な)疑問を、率直に監督にぶつけてみたり。「監督の女性観がバレてんじゃないですか?」と詰め寄ったんですが、「あれでいいんです!」と断言されてしまいました(笑)。


●『CONTINUE』Vol.42(太田出版

http://www.ohtabooks.com/publish/2008/10/16192610.html

コンティニューvol.42

最終回にあわせた『コードギアス R2』が巻頭。で「ギアスはすげえ問題山積みの作品だと思う」と言いまくってたせいか、メインの記事とはまったく関係なく(笑)、竹田プロデューサーへのインタビューを担当。あとは、第3特集の『かんなぎ』で、シリーズ構成・脚本の倉田英之さんへのインタビューと、『ブラスレイター板野一郎監督×虚淵玄(脚本)対談を担当。倉田さんへの取材は、最近の取材のなかでも(原稿の仕上がりも含めて)満足度が高かったかな。


●『薬師寺涼子の怪奇事件簿』DVD・第2巻(キングレコード

http://www.starchild.co.jp/special/yakushijiryouko/

薬師寺涼子の怪奇事件簿 第2巻 [DVD]

第1巻に続いて、第2巻でも封入パンフレットのインタビューを担当(あと、ジャケットのテキストも)。お相手は、総作画監督・コスチュームデザインの佐々木敦子さんと色彩設計の石黒けいさん。動画工房のそばにある喫茶店で収録したんですが、ここのお店がすごかった……。


●『二十面相の娘』DVD(ジェネオン/松竹/フジテレビ)

http://www.chico-tv.com/

二十面相の娘 4 [DVD] 二十面相の娘 5 (初回限定版) [DVD]

こちらも、引き続きリリース中。10月に第4巻、11月には第5巻が発売済み。封入パンフレットの構成・執筆、および、ジャケットのテキストライティングを担当。


●『ダ・ヴィンチ』2008年11月号(メディアファクトリー

レギュラーの「ミュージック ダ・ヴィンチ」(レコード評と矢野顕子さんへのインタビュー)と、『詩羽のいる街』で山本弘さんにインタビュー。矢野さんの取材は、マジで緊張しました。


●『ダ・ヴィンチ』2008年12月号(メディアファクトリー

で、気がついたらもう次の号も発売になっております。青山テルマさんへのインタビュー(あの人と本の話)、ハローバイバイ関暁夫さんへのインタビュー(『都市伝説2』)、そして『おたくの娘さんすたひろさんへのインタビューと、レギュラーの「ミュージック ダ・ヴィンチ」。妙に取材の多かった号。


●『ニュータイプ』2008年12月号(角川書店

この号は『まりあほりっく』だけかな? 居酒屋にて新房監督インタビュー(という名の呑み屋トーク)。お会いしたのは『ネギま!?』のとき以来なんですが、この人(とその作品)の面白さを伝えるのは、本当に難しい。


●『ザ・スニーカー』2008年12月号(角川書店

「東大でエンタメを学ぶ」連載の第3回。出ていただいたのは、ファン・ワークス代表取締役の高山晃さん。でもって、この連載は3回をもって終了。理由は、読者層と合わなかったから……って、そんなのやる前からわかってたことじゃん!(笑)


●『テイルズ オブ マガジン』Vol.3(角川書店

巻頭のアニメ版『テイルズ オブ ジ アビス』特集を担当。オープニング&エンディング解説の2ページは自分でやりましたが、ほかは全体の構成&原稿チェックのみ。


●『メガミマガジン』2008年12月号(学研)

レギュラーの「キャラクターキャッチアップ」とOVA版『ひぐらしのなく頃に 礼』の設定紹介ページ。基本は原稿チェックのみ。


●『GAME JAPAN』2008年12月号(ホビージャパン

jubeat』『鉄拳6BR』ほかを担当。てゆうか、ゲームの仕事ってコレくらいしかやってないな、最近。


●『S-Fマガジン』2008年12月号(早川書房

レギュラーのゲームコラムというか時評。東京ゲームショウの真っ最中に原稿を書いてたんですが、ショウの話はほとんどせず、ディンプルの『くまたんち』(http://www.dmpl.co.jp/kumatan/)を取り上げました。『プリンセスクラウン』のヴァニラウェアと、同人サークル「アシナガおじさん」のコラボという、ハバネロたんファンには堪らない制作陣。あー、『CONTINUE』の秋葉原特集で『ハバネロたんハウス』を買ったのは、もう3年も前になるのか……。とか思ってたら、シガタケさんのサイト(http://shigatake.web.infoseek.co.jp/kuma/sf_magazine.txt)で、このコラムが取り上げられてしまいました。う、嬉しいけど、恥ずかしい……(笑)。


■なんだかんだといって、いろいろ仕事してたんだなあ。

■そんでもって、現在放映中のアニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/)、第12話「招待フメーの正体フメー」の脚本を担当しました。……つっても、あと30分くらいで放映されちゃいますが。

2008年9月の営業報告

■先月に引き続き、9月度の営業報告です。先月は、イレギュラーな仕事はほとんどリリースされなかったのかな?


●『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』劇場パンフレット

http://www.gurren-lagann-movie.net/

9月6日から公開中の劇場アニメ『天元突破グレンラガン 紅蓮篇』のパンフレット。もうそろそろ上映も、終了に近づいているのかしら? ライターの志田英邦くんと分担して、僕は「キャラクター解説」と後半のメイキングパート(「作画の鬼」「撮影虎の穴」)を担当。「表紙をカット袋にするのはどう?」とか、雑談で出たアイデアがそのまま現物になってて、驚きました。


●アニメ『ミチコとハッチン』公式サイト

http://www.michikotohatchin.com/

山本沙代の初監督作『ミチコとハッチン』の、公式サイトのお手伝いをさせていただいてます(無記名)。声優陣からのコメントとか、世界観解説のテキストライティングとか。本編もちらっと先に見せていただいたんですが、ハッチンがメチャクチャかわいいです。


●アニメ『亡念のザムド』公式サイト

http://www.xamd.jp/

プレイステーションストアで配信中の、ボンズ最新作。公式サイトのうち、制作発表会のレポートとか、声優陣へのインタビューを担当しています(一部、無記名)。あと、これに付随して、店頭配布用のパンフレットの構成・執筆も担当しました(でも実は、まだ現物を見たことがない……)。


●「2008 AUTUMN ANIME GUIDE BOOK」(ジェネオン・エンタテインメント)

http://www.geneon-ent.co.jp/top_fl.html

ジェネオンからリリースされた、店頭配布用のブックレット。秋から冬にかけての新番組をコレクションした便利な一冊なんですが、このうち、『ハイランダー 劇場版』の川尻善昭監督へのインタビューを担当(無記名)。これもまだ、現物を見たことがないんだよなあ(笑)。


●『レオナルド博士とキリン村のなかまでしょ』第26話・脚本

http://hs04.wadax.ne.jp/~ften-jp/4cours_02.html

先月も書きましたが、テレビ東京系列で土曜日朝7時から放映中の番組『ファイテンション☆テレビ』内で流れていた、フラッシュアニメ。すでに最終回の放映が終わっていますが、その最終回の脚本をお手伝いしました。……といっても、僕はザックリしたプロットを上げただけで、あとは、監督のべんぴねこさんがガッツリ手を入れています。なにはともあれ半年間、お疲れさまでした>べんぴねこ監督


●『熱走!亀1グランプリ』脚本参加

http://hs04.wadax.ne.jp/~ften-jp/4cours_11.html

でもって『ファイテンション☆テレビ』は、10月からリニューアルされたんですが、そこで新しく始まったミニアニメに、脚本で参加しています。タカラトミーから発売中のオモチャ“亀1(かめわん)”(http://www.takaratomy.co.jp/products/kame1/)をモチーフにした作品。DLEとしては(たぶん)初めて、セルアニメに挑戦したことになるんでしょうか? 最初の担当回は第4話なので、10月25日放送かな。


●『薬師寺涼子の怪奇事件簿』DVD・第1巻(キングレコード

http://www.starchild.co.jp/special/yakushijiryouko/

薬師寺涼子の怪奇事件簿 第1巻 [DVD]

すでに放映は終了しましたが、アニメ『薬師寺涼子の怪奇事件簿』のDVD封入パンフレットにて、岩崎太郎監督と総作画監督・キャラクターデザインの谷口淳一郎さんの対談記事を担当。おふたりは、10年以上のおつきあいなんだそうですが、そういう感じを上手く、原稿に落とし込みたいなあ、と思ったり。ただ文字数が限られていたので、あまり上手くいかなかったかも……。


●『二十面相の娘』DVD(ジェネオン/松竹/フジテレビ)

http://www.chico-tv.com/

二十面相の娘 3 [DVD] 二十面相の娘 4 [DVD]

二十面相の娘』も、引き続きリリース中。9月に第3巻、10月に第4巻が発売。封入パンフレットの構成・執筆、および、ジャケットのテキストライティングを担当。


●『ダ・ヴィンチ』2008年10月号(メディアファクトリー

「ミュージック ダ・ヴィンチ」と、早見和真さんの小説『ひゃくはち』の紹介記事「僕たちが『ひゃくはち』を応援する理由」を担当。


●『GAMEJAPAN』2008年11月号(ホビージャパン

jubeat』『ランボー』などの紹介記事を担当。


●『メガミマガジン』2008年11月号(学研)

こちらもレギュラーの「キャラクターキャッチアップ」。新番組が多くて、気が遠くなりそうでした。


■でもって、現在放映中のアニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/)。脚本を担当した第6話「カードバトラーのお見舞い」が、10月12日に放映になります。連休中日ですが、お暇でしたらチェックしてみてください。

2008年8月の営業報告

■1年ぶりの更新が、営業報告というのもどうかと思うのですが、なんかここのところ立て続けに、関わった書籍等が発売になったりしてるので、まとめて挙げておきます(8月下旬〜9月頭まで)。

●『脳Rギュル ソラと耳にルルとパラソルに囁くカゲ』(小学館
http://gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200808.html#04

脳Rギュル 3 ~ソラと耳にルルとパラソルに囁くカゲ~ (ガガガ文庫)

佐藤大さんのところで、去年からずっと続けていた夢野久作ネタの、幻想怪奇ライトノベル(?)が最終巻を迎えました。この『脳Rギュル』というシリーズは、佐藤大さんがメインプロットを考えて、あとは登場人物ごとに別の書き手が担当する……という、ちょっと変わった書き方をしたのですが、そのうち僕は、シイという特殊能力を持った女子高生のパートを担当しています。「全然終わってないじゃん!」と思われるかもしれませんが、とりあえず当初考えていたところまでは、書き進められたのかな? いざ読み返してみると「あー、結局、やりたいことをやっちゃってるなー」とか、ヘンな感慨があったりします。


●『ジブリの森とポニョの海』(角川書店
http://www.kadokawa.co.jp/comic/bk_detail.php?pcd=200806000037

ジブリの森とポニョの海 宮崎駿と「崖の上のポニョ」

崖の上のポニョ』公開にあわせて発売されたインタビュー本。メインは、宮崎監督とロバート・ホワイティングの対談ですが、僕が担当したのは、それとは別の、近藤勝也×高坂希太郎×吉田昇の3人による「スタッフ鼎談」。裏表紙のおネムな顔のポニョがかわいいです。


●『テイルズオブマガジンコンプエース9月号増刊(角川書店

Tales of Magazine (テイルズ・オブ・マガジン) 2008年 09月号 [雑誌]

バンダイナムコの看板RPG『テイルズ』シリーズに焦点を当てたムックシリーズ(の創刊準備号)。本格創刊は10月からなんですが、Xbox360の新作『テイルズ オブ ヴェスペリア』にあわせて、ひと足お先に発売されました。担当したのはこのなかの、秋スタートの新作アニメ『テイルズ オブ ジ アビス』の記事。メインライティングは、事務所の野口くんに任せて、僕は全体の構成とこだま監督のインタビューを担当。


●『Charaberry's』Vol.5(エンターブレイン
http://www.enterbrain.co.jp/bslog/charaberrys/

Charaberrys Vol.5 (エンターブレインムック)

魔法遣いに大切なこと 〜夏のソラ〜』を担当。といっても、小林監督への取材は別の方が担当されていて、ページ全体の構成とキャラクター紹介などを担当。この『Charaberry's』、「女の子のためのキャラクター誌」と銘打ってるわりには、がっつりインタビューが載ってたりして、ちょっと驚きました。


●『CONTINUE』Vol.41(太田出版
http://cntblog.seesaa.net/

コンティニューvol.41

担当したのは、第一特集の「ジブリ作品解説」のうち『魔女の宅急便』『海がきこえる』の2本の解説。あと、第二特集『少女革命ウテナ』の、幾原監督×さいとうちほさんの対談(聞き手&構成)および作品解説をやってます。この対談用に改めて、シリーズと劇場版を通して観直したんですが、僕は本当に『ウテナ』という作品が好きなんだなあ……。ウテナ役の川上とも子さんが、この記事が出た直後に入院されて、かなりショックを受けました。回復を心からお祈りしています。


●『特撮ニュータイプ』2008年9月号
http://www.kadokawa.co.jp/mag/ntlive/

Newtype THE LIVE (ニュータイプ・ザ・ライブ) 2008年 09月号 [雑誌]

えー、アニメの『ブラスレイター』にかこつけて、脚本家の小林靖子さんと東映白倉伸一郎プロデューサーの対談を担当しております。当然のごとく、『ブラスレイター』の話はマクラ程度で、あとはもう、白倉さんが暴走しっぱなし(笑)。


●「レオナルド博士とキリン村のなかまでしょ」第22話&第24話・脚本
http://hs04.wadax.ne.jp/~ften-jp/4cours_02.html
テレビ東京で土曜日朝7時から放映中の『ファイテンション☆テレビ』内で、現在放送中のミニアニメ。これまで、第4話、第6話、第16話……と脚本(というかプロット?)を担当しているので、今回が4話目と5話目になります。僕がやってるやってないを抜きにして、面白いです。もし視聴可能であれば、ぜひ一度、見てみてください。


●『SFマガジン』2008年10月号(早川書房
レギュラーのゲームコラム。今月は『リズム天国ゴールド』(任天堂)を取り上げました。


●『GAMEJAPAN』2008年10月号(ホビージャパン
ランボー』など、アーケードゲームの紹介記事をいくつか担当。


●『メガミマガジン』2008年10月号(学研)
レギュラーは「キャラクターキャッチアップ」。あと今回だけ「マイノリティ・リポート」という連載コーナーをやってます。取り上げたキャラクターは『ブラスレイター』のアマンダ・ウェルナー。


●『ザ・スニーカー』2008年10月号(角川書店
「東大でエンタメを学ぶ」という、連載の第2回。今回、お話をうかがったのは、プロダクションI.G取締役社長の石川光久氏。


●『二十面相の娘』DVD(ジェネオン/松竹/フジテレビ)
http://www.chico-tv.com/

二十面相の娘 2 [DVD] 二十面相の娘 3 [DVD] 二十面相の娘 4 [DVD]

DVDシリーズのジャケットとか封入解説書の構成・執筆を担当。


■あと忘れちゃいけない告知がひとつ。9月7日から放映スタートしているアニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』(http://www.nagoyatv.com/battlespirits/)に、脚本で参加しています。カードゲームで男児向けという、ある意味、アニメのド本道の作品です。テレビ朝日系列で、毎週日曜朝7時から放映中です。よろしければ、ぜひチェックしてみてください。

『時かけ』の危険性について

時をかける少女 通常版 [DVD]


■うわー、気がつくともう半年以上も放置してしたのか……。どうにもこの筆不精を直したい。てゆうか実は、去年公開されたとある映画について書こう書こうと思いながら「いや、もう一度劇場で確認してから書こう」とか「絵コンテ集をチェックしてから書こう」とか「せっかくだからDVDの発売タイミングに合わせて」とか考えているうちに、テレビ放映も終わってしまいました。「何が」って、そりゃあもちろん、細田守監督『時をかける少女』のことです。


アニメ雑誌で原稿を書いたりしていると、当然のごとく、いろんな評価が飛び込んでくるわけです。それは『時かけ』に限らず、今テレビで放映してる作品とか、これから映画館でかかる作品の前評判とか。で『時かけ』に関しては、事務所の菊崎くんがメイキングを撮影してたり、当時顔を会わせる機会の多かったライターの古川耕さんが激賞していて――というか、細田守があの『ONE PIECE』の次に撮った映画なら、当然観ねばならんだろう、と。だけど、連日テアトル新宿はすごい混みようで、なんとなく機会を逃しているうちに、ようやく観たのが東京での上映がほぼ終わりに近づいた頃のこと。「泣ける」とか「青春時代を思い出す」とか「甘酸っぱい」とか、そういう評判だけはやたらと耳に入ってくるんだけど、さてどんなもんかな? と、郊外のシネコンまで出かけましたよ。なんか妙に寒くて、行き帰りの電車がガラガラだったことを思い出す。


■んで、まあ、上映が始まってしばらくのうちは「ふんふん、そうか」と思ってたわけです。あー、さすが細田さんだなあ、同ポの使い方とか、上手くまとめてるよなあ、なんて。ただ『ONE PIECE』のクライマックス――ほとんど無根拠に敵ボスに立ち向かっていく麦わら帽子の異様な形相を目の当たりにしていたこちらとしては、正直物足りない。確かに「甘酸っぱい」「青春もの」で「泣ける」のはわかるし、真琴のキャラクター造形もいいなーとは思う。でもなー……って感じだったんです、最初のうちは。


■「あれ?」と思ったのは、後半も後半。真琴が、千昭の待っている川べりに向かって走る、長回しのカット。ちょうどバストアップでカメラは真琴を押さえていて、ずーーーっとフォローしていく。カメラの移動速度は一定なんだけど、真琴が疲れてちょっとスピードが落ちて、それでも「なにくそ!」って力いっぱい走り出して、画面の左側に抜けていく。このカットを見たときに「なんか異様なことが起きてるぞ」と思ったわけです。


■これは以前、ここに書いたことですが、アニメーションというのは――特に、日本の主流であるセル(手描き)アニメーションにおいては、画面の内に向かって情報量を高めていく傾向が強い。絵というのは、どうしても実写に較べて情報量が少ない。むしろそこでは「いかにデフォルメするか」が重要だったりして、つまり情報「量」ではなく、情報「質」によって、観客の受け取る情報量を調整することが、アニメーションのスタイルになるわけですが、上述のシーンは不思議と「外に開いていく」ような感覚があった。例えば、真琴はカットの初めから走っていて、カットの終わりでもまだ走り続けている。たぶん、カットのあとも「真琴はかけ続けている」。


■もうひとつ、上述のシーンで注意すべきなのはは、彼女が「どこを走っているか」が明示されていない。例えば、このカットの前に彼女の全身が写っているカットを挿入して「走っている状況」を説明することは可能なはずなのに、「彼女は突然、走っている」。たぶん真琴は、近所の商店街らしきところを走っているようなのだけれども、それがわかるカットは存在しない。しかも丁寧なことに、走りの途中で、背景が青空になるところがあって、ここはまるで彼女が「空中をかけて」いる――無時間という時間、どこでもない場所を走り抜けているようにさえ見える。


■そして、もうひとつ重要な場面が、この後に来る。夕暮れの荒川土手で話す、真琴と千昭のシーン。すでに逃れることができなくなった別れを、ふたりが確認しあう場面ですね。


■僕が仰天したのは、画面左に向かって歩き去っていく千昭に向かって、真琴が大声で叫ぶシーンです。彼女は、画面の外に向かって「別れ」を告げる。これも前々回に書いたことだけど、アニメーションにおいて、原則的に画面の外は「存在しない(描かれていない)」のです。つまり、彼女は「不在の千昭」に向かって声をかける。別れを告げる。


■これだけなら、アニメでもよくあるシーンだとは思う。が、驚きは次の瞬間にやってくる。なんと、カメラは次のカットで「千昭が歩き去った方向」を映す。そして、そこに千昭はいないのです。やはり真琴は「不在」に向かって、声をかけていたのだ……!


■と、すでに作品を観たことのある人ならご存知でしょうが、このあと同ポで真横からのショットに切り替わり、泣きながら反対方向(画面右)へと歩いていく真琴を、千昭が追いかけてくる。そう、「不在になった千昭」が――あるいは「千昭という不在」が、本当に最後の言葉を告げるために、もう一度だけ戻ってくる。


■この一連のシーンを見て、僕は呆然としてしまった。ここでは、ほとんど何ひとつ「説明されていない」。なにやら異常な事態が起きているらしいのだけれど、いったい何が起こっているのか、誰も「説明」してくれないし、むしろ「説明をしない」ことで、むき出しの事件が私たちの前に放り出されている。『時をかける少女』の前半が、恐ろしいほど徹底的に「説明」していたのと、あからさまに好対照で、つまりここで細田は「説明」という武器を放棄して、ほとんどエモーションとしか呼べない“何か”に身を委ねているようにさえ思える。そしてそれは、はっきりと「フレームの外」に向かって、開かれているのだ。


■これが僕の先入観だけの問題ではないのは、絵コンテ集を見れば明らかだろうと思う。というのも、時間の止まった渋谷の交差点のシーン(ここからDパートが始まる)から以降、こうした「説明」を省いたシーンが頻出する。まるでこれまでずっと我慢していたものが、一気に噴出するように。画面の内側のコントロールすることで、観客に「正しい映像」を伝えるのではなく、画面の外側にいる「私たちを映像に直接巻き込んでしまう」こと。そんな異様なカットが、どうやら意図的に配置されている。


■だから僕は、この映画を観終わって、唖然とするほかなかった。アニメーションでもこんな表現が可能だったなんて! ……だから『時をかける少女』は、少なくとも「感動作」や「泣ける青春映画」なんかではない。「ウェルメイド」という言葉が似合うような、安全さはまったくない。むしろ、かなり「危険な何かをはらんだ異様な作品」なのだ。少なくとも僕にとっては。

映画は(やはり)恐ろしい

■またしても、話のネタにしてしまって本当に申し訳ないのだが、『ニュータイプ』に連載中の、藤津亮太のコラム「アニメの門」を読んでいて、「んー?」と思ったことがあったのだった。件の記事が掲載されていたのは、2006年11月号。「B級映画パラドックス」という、サブタイトルが掲げられている。


■「んー?」と思った。……といっても、なにも批判しようというわけではなくて、藤津が挙げている論点に深く頷いたからなのだった。彼は言う。「B級映画」には、ふたつの側面がある。企画的特性である「低予算映画」と、ジャンル映画的な精神の在りようを指す「肩の凝らない娯楽映画」。このふたつのうち、アニメーションは後者しか実現できない。――というか、後者を実現しようとすると、必然的に制作予算が高くなってしまい、前者の達成が難しくなってしまうのだ、と。


■さらに、藤津は続ける。むしろアニメとは、だいたいにおいてその成り立ちが「B級映画」なのである、と。アニメの大半が「肩の凝らないジャンルもの(そのジャンルは、ロボットがワサワサ出てくる近未来SFモノだったり、年端のいかない子供たちがあるルールに則って戦うバトルモノだったり、特殊な変身能力を持った少女たちの魔法少女モノだったり、女の子のおっぱいとパンチラが満載の美少女モノだったり――あるいは、その混合ジャンル)である」のには、それなりの理由があるのだ、と。アニメは、その企画のあり方からして「B級」なのであって、つまり、アニメには(本質的には)ジャンルムービーしか存在しないのだ。


■そして、そのオルタナティブが存在するとすれば「量産が難しいA級作品だろう」と、彼は論を進める(そしてそのとき、この「A級」作品というのは、たぶんスタジオジブリの――というか宮崎駿の一連の作品を指しているのかな? と思う)のだが、それはまず置いておこう。ここで重要なのは“アニメは、B級映画的ポジションに立っている”という指摘だ。


■アニメと実写は、映画というメディアの上では等価だ。どちらも、モーション・ピクチャー(動く絵)なのだから。しかし、決定的な違いがある。それは、現実の役者が(フィルム上に)出てくるか出てこないか、だ。


■役者というのは、映画において厄介な存在で、例えば役所広司が画面上に出てくると「あ、役所広司だ」と、私たちは思う。つまり、映画のなかでどんな役柄を演じようと、役所広司役所広司なのであって、映画が始まった途端に役者は、映画の外の情報を映画のなかへと持ち込んでしまう。


■AVのなかには「そっくりさんモノ」とでも名づけられるジャンルが存在していて、なぜそんなジャンルが成立するかといえば、僕や貴方の知っている“あの女優(のそっくりさん)”が、淫らな格好であはーんとかうふーんとかやってる。つまり、その女優について私たちが知ってしまっている“人生(というデータ)”を(半ば強引に)エロティシズムの起動装置として据えているからなのである……というのは、余談ですね。


■翻って、B級映画である。B級映画には、まず有名俳優が出てこない。出てくる役者は、ほとんど誰も知らない無名の俳優ばかりだ。つまり彼らは、映画の外から“人生というデータ”を持ち込みにくい。だって、その人がどんな人なのか、僕たちの誰も知らないんだから。B級映画(の多く)は、まず“役者”という情報を欠いている。


■加えて、B級映画は予算の都合から、映画に必要と思われる情報の多くを欠落させてしまう。たとえば、RKOの『暗黒街に明日はない』という典型的なB級映画には、都合、4つの場面しか登場しない。主人公の自宅と事件現場と、その外と警察署(ホントはこれに空港のロケシーンが加わるが、わずか数カット程度しかない)。この4つの場面を交互に繰り返すことで、なんとか67分の物語をでっち上げてしまうのだ。


■あるいは、香港のフィルマーク社というところが量産した忍者映画群はもっとヒドくて、東南アジアあたりから輸入してきた映画を、バラバラに解体したあげくに、忍者が登場するシーンを無理やり挟み込んで、1本の映画をでっち上げてしまう。……もちろん、まったく見るに耐えない作品ばかりなのだけれど。


■とどのつまり、B級映画とは、本質的に“不十分な映画”を指す。


■えー、なんの話だっけ? そうそう、アニメはB級映画なのだ、という話。つまり、俳優も存在せず、セットにもお金をかけられず、ひたすら人力で“映画を成立させるために必要最小限の情報”からなる映画。それを僕は、B級映画と呼ぼうと思う。そして、それは決して恥じるべきものでも、マニアがこっそり見て楽しむだけのものでもない。予算はなくとも、機知と打算で四角いスクリーンに描き出される“何か”。それは、ときに私たちを、とんでもないところへと連れていってくれる。


■「そんなバカな!」と、あなたは言うかもしれない。しかし、そんな「バカな」ことが起こってしまうのが、映画の恐ろしいところなのだ。

わからないのはいいことかもしれない

■たとえば。僕が激しくイライラしてしまうのは、“ここ数年、「映画」というものが気になっているんだ。「映画って何なんだろう」みたいな事を考えたりしているわけ”なんていう発言を読んだときで、しかもそのあとに“映画が分かってないと、アニメも分からないと思ったからなんだよ”なんて話が続くと、お前は映画もアニメも、わかんなくていいよ! そんなことわかんなくったって、人生にはなにも困らないんだし! とか思う。


■たぶん僕が何にいらだっているのかといえば、「映画」と「アニメ」を別のモノに区分けしようとする思考(あるいは嗜好)そのものであって、あるいは「映画が偉くてアニメは下だ」とか、「いやいやアニメの方が上だ」というような、未熟で頭の悪い議論が巻き起こってしまうこと、それ自体が頭にくる。映画は、わかったりわからなかったりするモノではなくて、ただ僕たちの目の前そこにある、芸術ジャンルのひとつでしかない。


■なぜ「映画」という言葉が特権的に響くのかといえば、それはもう、人類が初めて体験した映像メディアが「スクリーンに向かって、1秒何コマかで投影される連続写真」だったから、ってことにほかならない。それを人は「映画」と呼んだけれども、そのあと映画は技術とともに、さまざまに変化し、違いを生んできた。確かに、テレビの受像機に映し出される映像と、スクリーンに投影される映像は“どこかが違う”。でも、それも含めて、すべては映画なのだ。


■……といいながら、毎週放送されるテレビアニメを山のように浴びて、たまには映画館に出かけて大スクリーンで『父親たちの星条旗』を観て、テレビゲームやらハードディスクレコーダーに録り溜めたドラマを消化しつつ、さらにはYouTubeで素人の録ったビデオを見たりする。そうしているうちに、確かに映画にも2種類あることに気がつかされる……というのも、また事実なのだ。


■映画が原理的に抱えている限界はいくつかあるけれども、そのひとつが、スクリーンの端。縦何センチ×横何センチか、の四角形。映画は、この四角形から(基本的に)逃れることができない。フィルムに描き込まれたアレやソレは、この四角形の上で再現され、再現され、何度でも再現される。しかし、スクリーンの(あるいはテレビの、あるいはパソコンモニター上のウィンドウの)外枠の外に出ることは、絶対にない。そこは、映画にとって存在しない場所、なのだ。


■が、恐ろしいことに、星の数ほどある映画のなかには、この“外枠の外”がまるで実在するように感じられる作品がいくつもある。これはかつて、黒沢清がインタビューで答えていた例だが、スクリーンに映し出された“扉”。私たちは、その閉じられた扉の向こうにも、世界が延長していることを、本能的に“知っている”(本当は、ただの書き割りかもしれないのに!)。そう、私たちは“スクリーンに映し出された扉”の向こうに――言葉を換えれば“外枠の外”に、まるで世界が続いているかのように、勘違いをしてしまうのだ。


■もし、セルアニメーションと呼ばれる芸術形式が特殊なのだとすれば、それは“外枠の外”が、本質的に存在しえないこと、にある。1秒に何コマかの“描かれた絵”の連続でしかないセルアニメにおいて、“描かれなかった絵”は存在しないに等しい。上の“スクリーン上の扉”の例でいえば、アニメのなかの“扉”の向こう側、は存在しない。なぜなら、その“外枠の外”は、これまでも描かれたことはなく、これからも描かれることはなく、世界のどこにもありえない場所なのだから。それは単に“不在”なのだ。


セルアニメーションのユニークさは、こうした“外の不在”に起因している。アニメーションに“外”はない。アニメーションは、スクリーンに切り取られた四角形の“内”に充足しなければならない――むしろ、その“内側”を、どのような情報で埋めていくか、が問われるようになる。これはもちろん、セルアニメーションが原理的に抱えてしまう限界だけれど、それは別に不幸なことじゃあない。


■そうして2種類の映画が、この世には登場する。ひとつは、スクリーンの“内側”に向かって、ひたすら没入していく映画。もうひとつは、それとは逆に“外枠の外”に向かって伸びていこうとする映画。アニメと「映画」に差異は存在しない。ただ、スクリーンの内と外にどう挑むのか。そうした複雑な力が交錯する場として、私たちの前に“映画”は立ち現れるのだ……。


■というのは、もちろんタチの悪い冗談ですが。

またイベント告知です!

■えー、またイベント告知ですみません。今日(12日)の夜、ロフトプラスワンhttp://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/)にてイベントをやります!


bootleg! Vol.8〜『●●●』非公式ナイト」


「公式以上の非公式イベント」をコンセプトに、話題性のあるアニメーション作品を語り合う「非公式ナイト」Vol.8開催!! なんと今回お題となる作品タイトルは完全シークレット!! 超有名ゲストも出演予定!! なにが飛び出すかわからないまさに本当の「非公式」ナイトです!!


【司会】大塚ギチ(bootleg!)
【出演】京田知己(アニメ監督)ほかビッグゲスト予定
Open 18:30/Start 19:00
¥1,000(飲食別)


■以上が、公式サイトに掲載されている情報なのですが、取り上げる作品名が『●●●』になっているのは、別にカマをかけてるわけでもなんでもなく、バレると怒られんじゃねーの? という恐れが非常に高いので、告知が打てないという……。この『●●●』、「あの伝説のスタッフが再び結集!」というキャッチがぴったりの作品なのですが、『エヴァ』ではありません。あと『ゲド』でも『時かけ』でも『ブレイブ』でも『NARUTO』でも『遥かなる時空の中で』でもありません。『王と鳥』だったら面白いんだけど、違います。


■で、イベント開始まであと20時間を切った現状ですが、まだゲストが完全確定していないという状況。いろいろとお声がけをして、それなりの感触はあるのですが、みなさん本当に忙しい方ばかりで……。もし全員が壇上に上がれば、かなり凄いことになるのですが、ある種、闇鍋な感じです。というわけで、主催者側としても、お客さんも読めない、展開も見えない、いったいどうなるか皆目見当がつかない……という、恐ろしい状態です。先ほど、大塚から進行表がメールされてきたのですが、大枠が書かれているだけで、中身はほぼ未定……。恐ろしすぎて、異常なハイテンションで壇上に上がることになりそうです。うわー(頭を抱える)。


■こんな状態ですが、なんとか楽しんでいただけるモノにすべく、ガリガリ準備中です。ので、時間に余裕がある方、物好きな方はぜひ足をお運びください……。